#藤岡朋也石鯛針研究所④
今日は「モドリ」のお話です。
プロト石鯛17号~21号を送らせていただきました。「新型コロナ」「長梅雨」「猛暑」など送らせてもらうタイミングが悪かったのもあり「秋につかうね~」と言っていただいた方が多かったように思います。
そんな中、同じ意見を複数の方から頂いたので”もどり”をブログに取り上げさせていただきます。
・レポート頂いた症状は
魚を磯ないし防波堤に抜き上げた後、魚が暴れているうちに針が外れてしまうとの事でした。
・ご意見いただいた内容は
針をよく観察されている方で「モドリが小さい」のでは?とのご指摘でした。もう少し大きい方が良いのでは?と・・・
No2とNo3の針(17号)を使用し掛かり場所はあまり良くなく、唇(皮?)に掛かっていたと教えていただきました。
(針についてご指導いただける方は掛かりが悪かった場合でもしっかりそれも伝えてくださる・・・本当にありがたい事です。学びになります。あざーす)
・釣針屋の狙い
今回の試作のモドリはご指摘の通り「小さい」と思います。
これは僕もしくは機械がポンコツで「小さく出来てしまった!」のではなく狙って小さくしています。
・モドリ(イケ)は傷と同じと考えて・・
釣針業界ではモドリの事を「イケ」と呼んでいますが、イケの大きさを考える時に絶対おさえておきたいポイントがあります。それは
イケ=傷(キズ)・・・です。
石鯛針を故意にペンチで折る場合、一番”簡単に折れる”のは穴周りです。2番目は当然ですがイケ(モドリ)のあたりです。
そう!イケは針そのものには折れてしまうキッカケになっている傷のような存在なんです。
写真1は実験としてイケ(モドリ)を深く大きく加工したものです。線径の半分近くまで食い込んでイケを起こしています。
例えばこの写真の針、シワリ部分をペンチでつかんで力を加えると簡単に折れる事が想像できると思います。
次の写真は
試作に採用したイケ(モドリ)の大きさです。拡大率は同じなのでかなり小さい事がわかるかと思います。
線径に対して浅めに切り込んで短いイケ(モドリ)をおこしています。
・モドリの作り方
順番が前後しますが、写真3の上側はイケ(モドリ)をおこす刃物です。見た目通り「カンナ」と呼ばれています。写真のカンナはブランクと呼んでおりベースとなる共通形状です。ここから研磨で用途(針)に合わせて刃先を調整して使用します。
下の写真はややピントがあっていませんが加工の様子を再現したものです。針に対してカンナがある入射角をもって切り込む事でイケ(モドリ)が起きます。
モドリ=傷(キズ)と表現しましたが、イケ(モドリ)は材料に切り込んでおこすのでその大きさ(深さ)は針そのものの強度に大きく関係してきます。
・イケ(モドリ)のタイプは?
写真4は「薄く長い」を狙っているイケ(モドリ)です。
深く切り込んでイケ(モドリ)を大きくすると折れやすくなるためカンナの入射角を小さくして薄く長く切り込み長いイケ(モドリ)を実現しています。
このタイプのイケ(モドリ)を採用している石鯛針はたくさんありますのでご自分の針を注意して見てみてください。
モドリ付近から針自体は折れにくいと言えます。しかしイケ(モドリ)そのものは若干弱そうにも見えます。
量産のお話しになりますが、カンナが摩耗して切れ止むとイケ(モドリ)はどんどん薄くなる傾向があり、作り手も注意が必要です。
ズバッと言います
号数違いでイケ(モドリ)のタイプが大きく違う場合はメーカーの石鯛針に対する思いが弱いか?管理能力が低い?のどちらかです。
試作で採用しているモドリ
写真2と写真4を比較して分類するなら今回の試作に採用したイケ(モドリ)は
”やや厚めで小さい(短い)タイプ”といえます
・魚のキープ能力は小さい?と思われます。
・モドリ自体は強く折れにくいです。
・針自体も折れにくいイケ(モドリ)の厚みを狙っています。
次回試作(石鯛プロトⅡ)のモドリは?
インスタやFacebookで公開していますが、「石鯛プロトⅡ17号」も同じタイプのモドリを採用しています。
せっかくご意見、アドバイスを頂いたのに大変申し訳なく思いますが、複数の要素を一度に変更しては何が良い?のか悪いのか?が分からなくなってしまうので今回は形状の変更に重点をおきました。どうかご理解ください。
形状変更後益々、作り手としてイケ(モドリ)は”薄く小さく”したいと感じてしまいます。これは形状から読み取っていただけるのではと思います。
試作プロトⅡ(次回試作)は17号のみ3種類を各2本セット合計6本で準備しております。今回はご希望の方のみに送らせていただきます。Facebook→メッセンジャーでぜひご連絡ください。