カーブを描いた軸の効果?2
カーブを描いた軸
一般に「軸」といえばまっすぐに伸びた物をさしますが今回は「出来るだけ」直線の部分が少なくなる様に形状を作りました。
「出来るだけ」と書いたのは今回はマルチヘッドを採用したためで耳からギザの部分は直線的になっております。
ギザの終わった部分からは軸部も緩やかなカーブを描きながら形状を構成
(第二回の製造ロッドではさらに直線部がなくなる様に変更)
カーブを描いた針の歴史と意図
一般に軸と呼ばれる部分がカーブあるいは折れ曲がった針は超大物針などでは本当に古くからあります。
例をあげればカジキ針(改良カジキ)、クエ針、マグロ針、泳がせ針など・・・
あまりにも歴史は長くもはや作られた当初の「意図」を知る人は天国か・・・。大物針に特化した針屋でもその意図を正確に知る人は現代にはいませんでした。
ならば
形状から推測できる事は
・軸を緩やかにカーブする事でバネ効果をもたせる
・カーブする事で伸びしろを増やす。
・餌をぶら下げた時や引っ張る時のバランス点の変更
などでしょうか?
石鯛SF1作り手の意図
そもそも「長く残っている物には理由がある」上記の様に形状がイメージさす機能は石鯛針でどんな効果を発揮するのか試したい!と思ったのがこの針を作った意図です。とにかく試したい!
とりわけ石鯛特有の口への相性について↓は興味深々だ。
この針(軸のカーブ)が石鯛の口の中で針掛りに至るまでにどう作用するか想像するだけでワクワクするのです。
いつもの事ですが
さらに細かく作り手のイメージを伝える事は控えます^_^
この針の存在が石鯛師の楽しみ方の1つになれば良いなと思っております。
カーブを描いた軸の効果?
現在、釣針屋comoeでは6種の石鯛針をラインナップしております。
それぞれの釣り人が形状を見て餌との相性や掛かりなどを自由イメージして選択してもらえば良いと思います。パッケージ、品名などによるイメージのすり込みは一切しません。実際の針を見て選ばれるものを作りたいと考えております。
しかしながら
作り手としてまったく形状に意図(イメージ)が無い訳ではありません。今回は特徴的な形状の「石鯛SF1」を題材に少し作り手側の意図についてお話しします。
このところ
橋本陽一郎氏にも「石鯛SF1 17号」をリクエストいただきます。
橋本氏とは特に約束事もないので出来た針は全種類送ります。その中から良いと思われるものを自由に選択して使っておられます。全6種の内、使われるのは「石鯛Basic1長軸17号」「石鯛Basic3」「石鯛SF1」の3種です。2023春~夏は「石鯛SF1」の使用が多い様に思います。
石鯛SF1は魚に掛かるのか?
まずもって魚に掛かるのか?と作り手も少しは思った奇妙な形状の「石鯛SF1」ですが・・
橋本氏の釣果によてその不安は完全に払拭されました。
橋本氏ご本人に確認した事は
「問題なく掛かるのか?」「餌との相性」の結果が出ている2点だけ。
橋本氏のご回答は
「魚が走れば問題なく掛かりますよ~。」「形状から餌がつけにくいイメージですがそうでもないですよ~。」といつものやさしい口調です。
それ以外に水中で何らかのメリットがあるのかもしれませんが継続的に使用いただくなかですこしづつ見えてくるのでは?と思っております・・・・
さて本題の「石鯛SF1製作の意図」ですが
・カーブを描いた軸の効果
を中心に製作意図を書いていこうかと思います。「石鯛SF1は掛かるのか?」なんて表題をつけてみましたが・・・本当は餌との相性以外はまったく心配していませんでした。皆さんもご承知の通りこの様な軸がカーブを描いた針は大物針では昔からありすでに実績がございます。
ですから今回は石鯛針への応用?流用?になりなんら新しい事はなく石鯛釣りとの相性がどうか?という試みになります・・・・
少し長くなってしまいました。書きたい事がたくさんありますので次回ブログに続きます。
ハリスワイヤー付き石鯛針の試作①
とにかく始めてみました
誰かより勧めていただいた事はとにかくやってみるように心がけています。
今回、とあるお客様のご紹介でハリスワイヤー付き石鯛針の製造販売を検討する事になりました。
針を作る事以外はまったくの素人の私!
各メーカー少ないですがハリスワイヤー付きを出されております。近年ではスリーブ止めが多い様に感じます。
学びも兼ねてとにかく一度やってみよう!とご紹介いただいた方に連絡をとり結び方だけを指定して第一回の試作を作っていただきました。
この方はご自分でも長年にわたって仕掛けを販売され実績も十分積まれている方です。
第1回試作品
100本ほど作っていただき引張試験にかけてみようと思います。
仕様は
・ハリスワイヤー:#37(ドラゴン、バーマックス)32cm
・針:Basic1(プロト)短軸 長軸 17号
・逆巻き?ころし有?(正しい呼び方は??)
この様な感じで仕上がってきました。
この仕様ならよく見るストッパーもギリギリまでおろせるのでは?
外観をチェック!
ワイヤーの違い①
同じ1×7の#37番のワイヤーでもメーカーによって仕様は違うようです。
今回の2種類を比較するとドラゴンワイヤーがやや太くメーカーが出している平均強度もやや高い値で、張りもあります。
その分、結び周りはやや膨らみ大きく見えますね。(写真上はドラゴンワイヤー)
今回はここまでのご報告です。
次回は
・ワイヤーの違い②
・引張強度試験
・名人の技!
でブログを書いてまいります。
営業職はなくならない!と思った件
釣針の成形設備は各社で自作です。
加工部品点数は200以上、金額にして数百万にもなります。
加工部品は数が多いので外注加工に出します。
どんな仕事もそうですが
「設計者と部品加工会社にも深い信頼関係が必要です」
それを築くには長い時間を必要とします。
信頼関係が無いと図面に事細かい指示を増やす必要があり、寸法交差も厳しくなりがちです。
その結果、必要以上の精度と高価な部品を生み出してしまいます。
なので時間と費用を費やして要求する品質、精度、価格を推し量る事が出来るまでやり取りを積み上げる事で信頼関係を少しずつ築くわけです。
そうなるとお互いにとって適切な精度の部品と価格が安定して得られるのです。
2021/12/20
残念ながら信頼出来る営業マンさんが色々あって部品加工会社を退職されました。
またいちからやり直しです。
彼が担当していた会社の設計者が100%そう思ってガッカリしているでしょう。
経営者はどの仕事を機械やAiにさせて、どの仕事を人にお願いするかをしっかり考えないとダメですね。
追伸
僕も早く設備を充実させて多品種小ロッド製造を確立させ大好きな営業マンに専念したいです^_^!
店舗専用商品って何が違うの?④
一部店舗に白赤パッケージの石鯛針が置いてあるんだけど?と問い合わせをいただきます。
前回までのブログをまとめます。
石鯛Basic1 長軸 と比較して
・材料線径は同じ
16号(1.88mm) 17号(2.00mm)
・平打強め
店舗専用商品は強く平打し、餌切れ効果、針を伸ばす方向の力に対して強い設定
・形状は?
17号は平打を強く打つ分、針型はひとまわり小さく針も微軽量になります。
16号は針型はそのままで針重量は同じ、平打を強く打つ分ややワイドになります。
前回のブログの続き
前回のブログでは今から40〜50年前の研磨工程についてご紹介しました。昔の針先は現代のものよりやや丸みをおび鋭さは大幅に劣ります。
ベテラン石鯛師の中には石鯛釣りに限っては針先の鋭さを追い求めない方が結果が良い!との考え方もあり、それも一考の価値があると感じました。
といった経緯で
赤白パッケージの「店舗専用モデル」では針先をわざと鈍く太く仕上げております。
作り手として新たな挑戦!
多くのメーカーは専門のテスターやメーカーの意図で製品が「仕上り」「完成品」として世に出ます・・・・
それが
当たり前?
それが普通?
それがメーカーの責任?
本当にそうでしょうか?僕自身は
「この様に使ってください!」「この餌で使ってください」「~専用」といったうたい文句は使わないようにしています。
「遊びには余白が必要です」
釣人が自分で考え、選び、試す、工夫をする事で「釣りの前も釣りの後もより楽しく」なればと願っています。
今後も赤白パッケージ「インスピレーションモデル」は僕自身がやってみようと思いついた事をお届けいたします。
個人事業主メーカーの僕は少ない数量で生産出来るのでこの様な事も挑戦できる。
今回の試みの反省
今回のインスピレーションモデルでの反省の1つは「変化が小さすぎた」事です。
もう少し思い切った変化をつけておけばよかったかな?と思っています。
小さい変化をたくさん盛り込み過ぎたかと反省しています。
例えばノーマルの17号を1番手細い線で作る!
線径2.00mm材料 → 線径1.88mm材料
これなら告知も簡単~「細軸仕様」「太軸仕様」とすればいい訳です。
もちろんこれも考えたのですが・・・・鮎や渓流、上物磯では当たり前のようにある「太軸」「細軸」仕様よりもマニアックにしたいと考えた結果・・・変化が微妙過ぎるものが出来たわけです。
次回のインスピレーションモデル(赤白パッケージ)はこの反省を生かし
・わかりやすい変化
・比較しやすいテーマ
に重点をおいて作りたいと考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
店舗専用品って何が違うの?③
「ひっこ」ってご存知でしょうか?
これは関西弁なのか??・・・子供の頃からそう聞いて育ったため「ひっこ」の標準語が分かりません
google先生で調べる事から始めます・・・(~検索中~)・・分かりました!
全国的に通用する名前は「おがくず(おが屑)」のようです。そう大工さんや木材屋さんから出る「木のクズ」の事です。
釣針研磨(仕上)の歴史
現在の釣針は化学研磨によって鋭い針先を得られるようになりました。
化学研磨が普及する前(40年ほど前?)は通称「ひっこ磨き」と呼ばれる方法で焼入れ後の針を磨いておりました。
対角寸法が60cmほどの六角柱の木箱に「針」と「ひっこ」を入れフタをします。動力でこの箱を回転してゴロゴロの回します。
子供のころ記憶では30分ほど回していたように思います。
おが屑ごときで本当に鉄(鋼)が磨ける?と思われるかもしれませんが意外にもピッカピカに磨かれれて出てきます。
当時、この工程が主流だったころは磨き箱が5連6連と並び動力モーターを兼用するために天井付近にシャフトが通してあり「平ベルト」で回転させていました。
平ベルトで兼用のモーターなんて
社会の教科書の「産業革命の写真」くらいでしか見ませんね。
オールドファンの考えも一考の価値あり?
「超」がつくベテラン石鯛師の中には「現代の針は尖り過ぎ!でダメだ」といって針先をわざと鈍らす方もおられるそうです。
総じて言われるのは
・鋭すぎる針はよけいな所で針立ちして警戒されてしまう
・刺さらない歯をひろいやすい。滑った方が良い
・鋭いが過ぎると刺さるまでに針先が傷んでいる
などが上げられます。皆さんもこの様な話をお聞きになった事があるかもしれませんね。
~昔の針~
「ひっこ磨き」「おが屑磨き」では当然ですが針先も削れるため丸く仕上がります。
現代の針とは比べ物にならない鈍い針先といっても過言ではないです。
この時代を経験した石鯛師の話を一考するのも面白いかもしれません。
一般に針先は鋭ければ鋭いほど良いとされていますが、石鯛に関しては「適切」な鋭さが存在するような気がしております。
店舗専用(白パッケージ、数量限定品)
釣針屋comoeでは釣具店でしか買えない石鯛針を白赤パッケージで出しております。
前回のブログでは
・強い平打加工
・摩擦係数の少ない表面処理(滑りが良い針)
を取り上げましたが針先に関しても「石鯛Basic1」と比較して鈍角(鈍い)に変えております。
その詳細は次回ブログで・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
店舗専用品って何が違うの?②
石鯛 Basic1 長軸 / 短軸 に使っているパッケージは茶色のクラフト再生紙にロゴが印刷された台紙です。
釣針屋comoeの石鯛針を採用いただいた釣具店には、白台紙に赤文字で「inspiration model」と書いた針が販売してあるお店があります。↓↓↓
この2つのパッケージの「針形状はほぼ同じ」ですが細部が少し変えてあります。
なぜ2種類作ったか?などその経緯は後回しにさせてもらってその違いをご説明します。
左の影は「石鯛Basic1 長軸 17号」です。
右が「店舗専用品 石鯛Basic 17号」です。
ご覧の通り画像をパッと見ると同じ針に見えますが細部に違いがございます。
・平打の強さUP↑
魚が引く方向(針を伸ばす方向)の加重に対して、針の側面をプレスすると伸びに強くなります。この加工を「平打」と呼んでいます。
店舗専用品はこれを普通よりやや「強く」打っています。
よって針の断面はより縦長の俵型になり伸びに強くなります。
・平打の良い副作用?
石鯛釣りの餌は多種にわたります。甲殻類のように硬いものやサザエの赤身の様に弾力が強いものもあり様々です。
石鯛が残った餌(針)くわえ走ったときフトコロに残った餌を合わせの力で切り裂き、除去して初めて針先が魚にコンタクトする場合があると考えています。
(軸側に押しのける場合もあると思います)
むしろ冷静に考えるとその確率は非常に高い。
そう、なぜなら魚は針ではなく「餌をくわえている」からです。
この釣りの場合、針単体の形状だけ見て針掛りをイメージするのは危険で結果を伴わない事がありそうです。
餌を切り裂く上で平打が強い針は切り裂き抵抗が少なくなるというメリットが出てきます。
さらに店舗専用品には
摩擦係数の低い表面処理を採用しているのもその理由の1つです。
この石鯛針はカンヌキを狙う石鯛師の中でもオールドスタイルといえるテイストを抽出した針かもしれません。
長くなりそうなので次の説明は次回ブログに